命懸けの活動とは裏腹なキャラクターが漂う渡部陽一の人気もあって、「戦場カメラマン」が最近注目されているが、世界を駆けたカリスマ戦場写真家といえば、何といってもロバート・キャパの名前が思い起こされる。
スペイン内戦時の『崩れ落ちる兵士』で一躍脚光を浴びたキャパは、第2次世界大戦ではライフ誌のカメラマンとして、アフリカ戦線、イタリア戦線に従軍した。
「君の写真が物足りないとすれば、それは被写体に充分近づいていないからだ」との自らのことば通り、ノルマンジー上陸作戦では、最前線のオマハビーチに戦闘部隊とともに参加。混乱と緊張の中で撮影された『D-Day Landings』は、そのピンぼけ(実は暗室係が興奮のあまり現像に失敗したのが原因)によっていっそうの迫真を帯び、歴史的な作品として記憶されることとなった。ベトナム戦線従軍中、地雷を踏んで40歳で亡くなったが、生前にキャパが中心となって設立した写真家集団「マグナム・フォトス」は、今も優れた報道カメラマンを輩出している。
撮影したカメラマンの名前は知らなくとも、歴史を刻んだなじみある戦場写真も数多く存在する。
クリント・イーストウッド監督作品映画『父親たちの星条旗』であらためてクローズアップされた『硫黄島の星条旗』。摺鉢山の頂上に鋭角に突き刺さる旗と海兵隊員のダイナミックな肢体が、対日戦を制圧せんとする米軍の勢いを象徴している。
『仏僧の焼身自殺』や『戦争の恐怖』、『サイゴンでの処刑』は、ベトナム戦争の酷さを衝撃と共に伝えている。
日本人の戦場カメラマンとしては、ピュリッツアー賞を受賞した沢田教一が名高い。『安全への逃避』では、カメラ目線の少年の怯えた表情が印象的だ。無事生き延びたこの家族と沢田は、後日笑顔で再会している。キャパを崇拝していた沢田も、カンボジア戦線で殉死した。享年34歳。
『ハゲワシと少女』は、ケビン・カーターのピュリッツアー賞作品。スーダン内戦における撮影で、飢えに苦しみ倒れ込んだ少女を背後でハゲワシが狙う。この写真がニューヨーク・タイムズ紙に掲載されるや、「なぜ写真を撮る前に、少女を救わなかったのか」と糾弾する声がカーターに殺到したという。カーターはピュリッツアー賞受賞後程なく自死を遂げるが、実のところ、撮影時すぐ近くには母親がいて、少女がハゲワシの餌食になる危険はなかったとされる。それにしてもうずくまる少女のやせ細った姿が痛々しい。
凄絶かつ悲劇的な情景を活写して、時に世論を動かす程の力を発揮する戦場(戦争)写真だが、平和の尊さを明るい光景で訴えるものもある。
日本軍降伏のニュースに湧くニューヨーク・タイムズスクエアの人々を写し出した『勝利のキス』。水兵と看護師は知り合いではなく、行きずりに交わされた抱擁とキスだった。
『Burst of Joy』は、ベトナム戦線で北ベトナムに6年近くにわたって拘束された後、解放されて本土に無事帰還した米軍中佐とその家族の劇的な再会の瞬間を捉えた。中佐に向かって、歓喜に満ちた笑顔で躍動しながら駆け寄る子供たちと妻。何と感動的なショットか。しかし、残念ながら夫婦は翌年に離婚している。夫の生死が定かでなかった間に恋人ができた妻は、再会の3日前に別離の意志を夫に書き送っていたのだという。
References: Collection of Greatest War Photographs
Robert Capa
Burst of Joy - Wikipedia, the free encyclopedia
Coming Home
Posted: 9 January 2011
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