映画音楽の不朽の名曲といえば、『禁じられた遊び』『風と共に去りぬ』『エデンの東』『第三の男』『太陽がいっぱい』などがたちどころに思い浮かぶ。『ウェストサイド物語』『サウンド・オブ・ミュージック』や『卒業』には珠玉作品が散りばめられていた。少し時代が下って、『スティング』『ゴッドファーザー』『サタデー・ナイト・フィーバー』『ロッキー』の挿入曲も耳に残る。
名作映画のストーリーの細部は忘れていても、テーマ音楽に伴って、断片や情景が甦ってくる。
しかし中には、共に名作でありながら、映画と音楽が結びつかないまま別々に記憶されていることもあるものだ。
『モーニング・アフター』という曲をイージーリスニングで繰り返し聴いていた。ポール・モーリアオーケストラの演奏が軽快で耳に心地よい。ところで先日、YouTubeにアップロードされていた『ポセイドン・アドベンチャー』の動画を視聴して、「あっ」と思った。バックに流れる歌声のメロディーが、『モーニング・アフター』そのものだった。パニック映画の名作『ポセイドン・アドベンチャー』の主題歌であることを知らぬままに、ずっとこの曲を聴いていた。悲愴感や緊迫感と縁遠い甘美な曲調が、パニック映画にはいささか似つかわしくないせいもある。
『ポセイドン・アドベンチャー』は1972年に公開されたアメリカ映画。豪華客船「ポセイドン号」は、ニューヨークからギリシャに向けてセレブの乗客を乗せて航海している。大晦日の夜、乗客たちは新年のカウントダウンを迎え、皆大はしゃぎでパーティーに興じている。そんな時、ポセイドン号が32メートルの大津波をまともに受け、上下逆さまに転覆する。船内は大パニックに陥り、乗客の多くが一瞬のうちに犠牲となる。
わずかな生存者たちは、ジーン・ハックマン演じるスコット牧師に率いられて、各所で爆発が発生する危険極まりない船内を、海面に最も近い上方を目指して互いに助け合いながら必死に進む。
映画は、次第に人間ドラマの様相を鮮明にしていく。脱出行の途上で困難に遭遇するたび、一行の間では激しいいさかいも生じる。恐怖に生存をあきらめかける者も出る。老婦人やスコット牧師が、自らの命を賭して仲間を救う場面には、40年近く前も感動に浸った。
全体の音楽は、巨匠ジョン・ウィリアムズが担当したが、『モーニング・アフター』は、ジョエル・ハーシュホーンとアル・カッシャが作詞作曲した。モーリン・マクガヴァンのヒット曲を、劇中では落ちぶれた歌手役キャロル・リンレイが歌うが、歌詞を辿ると、再生への願いや明日への希望が込められていることがわかる。まさしくこの映画の主題だった。アカデミー主題歌賞を受賞し、名曲としてスタンダードナンバーにも数えられている。
Posted: 15 May 2010
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