「歌は世につれ、世は歌につれ」と言われるが、卒業式に歌われる歌も様変わりしている風。
かつて定番だった『仰げば尊し』や『蛍の光』は昨今ではあまり歌われず、人気歌手のヒット曲やオリジナル曲が多いという。
最近では、合唱曲『旅立ちの日に』が、各地の小中学校で人気を博している。すっかり知られる話となったが、埼玉県秩父の市立中学の校長が、卒業生に贈るために書いた詞に、音楽教諭が曲をつけて作られた。次第に周辺の学校に広がるうち音楽の教科書にも掲載され、SMAPがCMで口ずさんでさらに火がついた。聴けば、中年世代にも何ともいえないノスタルジアをそそる歌である。
それ以前は、海援隊が歌った『贈ることば』がよく流れ、2003年に出た森山直太朗の『さくら』も、友との名残り惜しい別れを切なく絶唱して従来とは趣を異にした卒業ソングとなった。はるか遡れば母親の森山良子にも『今日の日はさようなら』という、別れる友と永遠の友情を誓い合う曲があった。
友や師、思い出深い学び舎との別れ。一方で新たな旅立ちと溢れる希望。感受性豊かな時期に惜別に伴なう感傷と、未来への夢が交錯して歌われる卒業歌だが、さらに卒業につきものが「不安」。特に経済不況で就職難の現下、卒業など迎えたくないという大学生も多いことだろう。
大学卒業後の進路に迷い悩み、漠然とした不安に包まれて鬱屈した日々を過ごす若者の姿を描いたダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』が思い出される。サイモン&ガーファンクルの歌った主題曲『サウンドオブサイレンス』の静かな曲とささやくような歌声が、軸足定まらぬまま社会へ巣立つ青春期の覚束ない心模様とマッチしていた。
Posted: 10 January 2010
卒業の歌
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