大河ドラマ「篤姫」で人気の宮崎あおいが、2006年に主演したNHKの連続テレビ小説『純情きらり』。宮崎が演じた主人公の有森桜子が、戦時下の激動の時代、さまざまな苦難に遭遇しながらも、音楽に希望を見出して生きていく姿が描かれた。桜子が音楽を志す原点となったのが、亡き母親(竹下景子)から教わった『埴生の宿』という曲だった。
「埴生の宿もわが宿 玉のよそいうらやまじ」と続く難解な歌詞だが、そもそも埴生の宿とは、"土を塗って作った
貧しい小屋"のこと。この歌は実は「外国産」で、原詞はアメリカ人、曲はイギリス人の作によるもの。日本語詞は原詞に忠実に訳されている。『ビルマの竪琴』の中で、日本軍と英軍が対峙する緊張の中、いつ知れず互いに合唱する曲でもある。
童謡や唱歌等いわゆる抒情歌(じょじょうか)の歴史は比較的新しく、明治の新政府が欧化政策の一環として、子どもたちに西洋的な音楽教育を施すために作りはじめたものとされる。当初は西洋のメロディーに当時の国文学者で、和歌のたしなみのある者が作詞するケースが多く、その後、大正から昭和の文化爛熟期に瀧廉太郎、中山晋平、山田耕筰、北原白秋、野口雨情、西条八十などが、それまでの伝統的な日本の音楽とは異質の詩情豊かな歌の数々を生み出していく。
某調査によれば、日本人の好きな抒情歌のベスト5は、1位から順に『赤とんぼ』『故郷』『荒城の月』『早春賦』『月の砂漠』だったという。
日本のコーラスグループの草分け「ダークダックス」の喜草哲氏(きそうてつ・愛称ゲタさん)は、抒情歌の研究家としても知られる。コンサート活動のかたわら、抒情歌の貴重な資料を収集し、『日本の抒情歌』『うたのふるさと紀行』などの著書もある(現在ともに絶版)。喜早氏は、抒情歌を「抒情詩にメロディーをつけたもの」で「表現は優雅で品位の高い詞が要求され」かつ「美しく優雅で、上品なメロディーがつけられた歌」と定義づけている。そのことから、喜草氏は抒情歌を童謡や唱歌に限ることなく、歌謡曲の一部も抒情歌として選んでいる。そして、「抒情の心」とは「月が美しいと見え、花が美しいと思える感受性」と語っている。
時代の移ろいとともに、自然の風景や人々の暮らしが変化を遂げるのは必定であるが、郷愁をいざなう美しい抒情歌や童謡が、いつまでも歌い継がれていくことを願わずにはいられない。
Posted: 6 November 2008
想い出の抒情歌、歌謡曲
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