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イムジン河

南北朝鮮の軍事境界は北緯38度線として知られるが、この軍事境界線に沿って流れているのが、「臨津江」という河。朝鮮北部の山地を源流とし、南西に下りながら漢江と合流して黄海に注ぎ込む。南北分断を象徴するこの河をモチーフとして、北朝鮮において1954年に作られたのが『臨津江(リムジンガン)』という歌で、高宗漢が作曲し、朴世泳が作詞した。「リムジンガンの水は南北を静かに流れ、水鳥は川面を自由によぎるのに、なぜ我々は故郷へ帰れないのか。リムジンの流れよ答えておくれ」と訴える。

そして朝鮮民族の哀切な想いがこもる『臨津江』に魅せられた松山猛が日本語詞を書き、ザ・フォーク・クルセダーズが1968年に歌ったのが『イムジン河』である。加藤和彦によってカレッジフォークの曲調を帯び、反戦のメッセージも滲ませながら、当時の若者世代の心情や文化に親和した。しかし東西冷戦下のデリケートな時代、朝鮮総連がオリジナルと異なる詞に横やりを入れたりした末、この曲は程なく発禁処分となる。

パッチギ! (HD-DVD)その後何度か他の歌手によって再リリースされたが、2004年に製作された井筒和幸監督の映画『パッチギ』のテーマ曲に据えられ、再び「幻のイムジン河」が脚光を浴びることになった。映画では主人公松山康介(塩谷瞬)が、一目ぼれした在日朝鮮人の女子高生キョンジャ(沢尻エリカ)と親しくなるために、『イムジン河』を憶えギターを奏でる。最初は康介がこの曲を歌ったり、キョンジャと交際することを寛容に見ていたキョンジャの親族だったが、ある日、日本人高校生とのトラブルによって朝鮮人居住区の若者が命を失ったことを契機に態度が変わる。苦難の歴史を朝鮮民族に与えた日本人に、民族分断の悲しみや植民地支配の屈辱の思いがわかるわけもないと居住区への出入りも拒絶される。日本人と在日朝鮮人を隔てる「超えがたき河」を思い知り、涙ながらに康介がラジオで歌う『イムジン河』がキョンジャたちの耳にも届く。

Posted: 25 November 2007