常磐ハワイアンセンターの踊り子として、炭鉱町の再建に奮闘したダンサーたちを描いた映画『フラガール』。日本アカデミー賞を初め、2006-2007年度の数々の映画賞を受賞するなど大ヒットした。
かつて石炭は"黒いダイヤ"と呼ばれ、産業革命以降、長期間にわたり基盤的なエネルギー資源として採掘が続けられた。関連産業と炭鉱を抱える自治体は活況を呈したが、第2次世界大戦後の1950~60年代から、主役の座を石油や天然ガスへ譲るようになり、それとともに、鉱山会社や炭鉱労働者、産炭地の自治体は軒並み廃業・倒産と失業、町の衰退という連鎖的な打撃を被ることとなる。夕張市をはじめ、多くの炭鉱町が破綻をきたす中、閉塞の状況から脱し、フラガールたちの手で見事に再生を果たしたケースが福島県の常磐炭鉱だった。


常磐興産が開発を手がけた常磐炭鉱は、京浜工業地帯に近い首都圏近接の炭鉱として栄えた。しかし、例にもれず60年代半ばに経営状態が悪化し、常磐興産は石炭産業の行く末に見切りをつけ、常磐湯本温泉観光会社を設立して、観光産業に活路を見出そうとする。海外旅行が高値の花だった当時に「夢の島ハワイ」を演出したリゾート施設「常磐ハワイアンセンター」(現「スパリゾートハワイアンズ」)の建設を企図したのだった。
『フラガール』の、個性派素人集団がハプニングを経験しつつ結束し、努力の末花開くという展開は『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』などと同様だが、フラガールたちの場合、乾坤一擲、町の命運がその踊りに託されていた。
生まれ育った故郷のために力を尽くしたいと健気な生徒たちと、東京からやってきた少しひねくれ者の訳ありダンス教師(松雪泰子)の次第に深まる交流が素直に感動できる。家族や友人との別離の場面に、劇場内のあちこちですすり泣きの声がもれていた。蒼井優をはじめ、フラガール全員によるラストのダンスシーンも圧巻で息を呑む。
ドラマならではの脚色が施されているのは当然だが、製作スタッフは当時の関係者を訪ね歩いて、綿密な取材を重ねたうえで物語を構成したという。炭鉱業への誇りを捨てずにヤマの仕事に執着し続ける者たちと、時代の変化を受入れ、新しい潮流に身を委ねようとする人々とで二分された町が、最後にひとつになる場面が胸に迫る。
Posted: 18 November 2007


