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今でこそ中国の国土として返還がかなったものの、香港は理不尽にもアヘン戦争によって英国の植民地とされ、太平洋戦争で一時期日本軍の占領下に置かれ、さらに再び英国支配に長らく服するという複雑な歴史を抱えている。
40年近く前、その香港に住んでいた時分のある日、香港島の観光地として有名なビクトリア・ピークに出かけた。とある地点で「ここが『慕情』(1955年・米・ヘンリー・キング監督)の舞台となったところだ」と親から教えられたが、当時は『慕情』という映画も知る由なくピンとこなかった。長じてこの名作を初めてビデオで観た。ヒロインの女医が、勤務する病院の裏手の丘を少し登ったところで、ウィリアム・ホールデン演ずる新聞記者と人目を忍んで逢瀬を重ねるシーンに至り、「あの時のあの場所」に合点がいって何ともいえない感慨にとらわれた。
ジェニファー・ジョーンズが演じるヒロイン ハン・スーインは、英中混血の美しい女医。中国人だった夫を戦争で亡くしている。ある日病院のパーティーで、アメリカ人新聞記者マーク(ウィリアム・ホールデン)と知り合い恋におちる。病院裏手の丘の樹の下で逢瀬を重ね、海水浴に出かけてお互いを語り合う。マークには別居している妻がシンガポールにいる。スーインに求婚したマークだが、シンガポールの妻は離婚を承諾しない。そうこうしているうちに朝鮮戦争が勃発、マークは従軍記者として前線に赴く。マークの帰還を待ちわびるスーインだが、彼から届いた手紙を読んでいる最中に、マークの死亡を伝える記事が目に入る。
極めてシンプルな悲恋ストーリーながら、ジェニファー・ジョーンズの可憐さ、「東洋の真珠」と称えられた香港の美しい風景と主題曲『Love is a Many Splendored Thing(恋は素晴らしきもの)』の甘美なメロディーが、この映画を不朽の名作に仕立てあげた。
Posted: 21 September 2009

